「こり」って何?― こりの正体と、筋・筋膜性疼痛― 肩こり・首こり・顎こり、その「こり」を考える|足柄上郡 開成町の鍼灸・マッサージ|快晴鍼灸院(開成駅 西口 徒歩4分)
肩こり・首こり、そして当院が呼んでいる顎こり。「こり」は誰もが使うことばですが、「では、こりとは何か」と聞かれると、案外うまく答えられません。このページでは、足柄上郡・開成町の快晴鍼灸院が、こりをどのように理解し、何を手がかりに施術しているのかを、専門知識がなくても読み通せることばでご説明します。
「こり」とは ― 病名ではない、体感のことば
ひとことで言うと:「こり」とは、筋肉がこわばって、重い・張る・硬い・だるいと感じる状態を表す日本語の日常語です。医学的な病名ではありません。
厚生労働省の令和4年(2022年)国民生活基礎調査では、病気やけがなどの自覚症状のうち、男女とも「腰痛」に次いで「肩こり」を訴える人の割合が高くなっています。肩こりは、日本でもっとも多く訴えられる体の不調のひとつです。
一方で「こり」は、感じている本人のことばです。同じ「こっている」でも、重いのか、突っぱるのか、押すと響くのかは人によって違います。だからこそ当院では、ことばの奥で筋肉に何が起きているかを、手で触れて確かめることから始めます。
こりの正体 ― 筋・筋膜性疼痛(MPS)と、トラベル&サイモンズ
ひとことで言うと:当院は、こりの多くを「筋・筋膜性疼痛(MPS)」として理解しています。その理論の土台が、トラベル&サイモンズの『トリガーポイントマニュアル』です。
筋・筋膜性疼痛(MPS)とは
筋・筋膜性疼痛(Myofascial Pain Syndrome:MPS)は、筋肉とそれを包む膜(筋膜)から生まれる痛みやこわばりをとらえる考え方です。長時間の同じ姿勢、くり返しの動作、ストレスなどで筋肉が緊張し続けると、筋肉の中に押すと響く過敏な点(トリガーポイント)ができるとされます。当院では、このトリガーポイントを来院される方にもわかりやすく「しこり」と呼んでいます。
トリガーポイントの大きな特徴は、痛みやこりを感じる場所と、原因になっている場所がずれることがある点です(関連痛)。肩がこっているのに、もとになるしこりは首の付け根や肩甲骨の内側にある ―― こうした例を、筋肉ごとの「痛みの地図」として整理したのが、トラベル&サイモンズの仕事です。
筋肉を包む膜 ―「筋膜(ファシア)」
MPSの「筋膜」にあたるのが、筋肉を包み、筋肉と筋肉の境目をつくっている薄い膜 ―― ファシアです。ファシアの中や、ファシアに沿って、細い血管や神経が通っています。当院は、こりを筋肉の中のしこりだけでなく、この膜の層の重なりや滑り具合とあわせてみています(ファシア(筋膜)とは ― 当院の施術ページ)。
『トリガーポイントマニュアル(筋膜痛と機能障害)』(原著:Travell & Simons' Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual)
ジョン・F・ケネディ大統領の主治医を務めたジャネット・G・トラベル医師と、デビッド・G・サイモンズ医師による共著で、筋・筋膜性疼痛の施術における世界的な古典です。筋肉ごとのトリガーポイントの位置と関連痛のパターン、その成り立ちや長引かせる要因、触診の方法までを、解剖図とともに体系的にまとめています。
当院は開業以来、日本語版(川原群大 監訳)と英語の原著を日々参照し、この本にもとづく評価と施術を続けてきました。書誌情報は当院の施術ページ「施術理論の礎」に掲載しています。
くわしく:専門用語メモ(トリガーポイント・関連痛・永続化要因)
- トリガーポイント(TrP) ― 骨格筋の中の、索状に硬くなった部分(索状硬結)にある過敏な点。押すと痛みが再現され、離れた場所に響くことがあるとされます。
- 関連痛 ― 原因の場所とは離れた場所に感じる痛み。しくみは痛みのしくみ(関連痛)で解説しています。
- 永続化要因 ― 姿勢・くり返しの動作・睡眠・ストレスなど、トリガーポイントを長引かせる要因。トラベル&サイモンズは、しこりそのものだけでなく、この要因を見直すことを重視しています。
こり・張り・しこり・痛み・しびれ ― 似たことばの違い
ひとことで言うと:こり・張り・しこりは筋肉の側のことば、しびれは神経が関わることがあるため、分けて考えます。
| ことば | 当院での使い方・目安 |
|---|---|
| こり | 筋肉がこわばって、重い・だるい・硬いと感じる状態。範囲がぼんやりしていることが多い体感のことば。 |
| 張り | 筋肉が突っぱる・引っぱられる感じ。首筋・ふくらはぎなど、筋肉の走る方向に沿って感じられることが多い(首筋の張り)。 |
| しこり | 筋肉の中に触れる、押すと響く過敏な点。当院ではトリガーポイントを指して使っています(こりの正体)。 |
| 痛み | こりが強まって痛みとして感じられることもあれば、こりとは別の原因の痛みもあります。痛みの性質や経過によっては医療機関の受診を優先します。 |
| しびれ | ジンジン・ビリビリする、感覚が鈍い、力が入りにくい ―― 神経が関わることがあるため、こりとは分けて考えます(こりではないかもしれないサイン)。 |
施術中に来院される方が使う、もっと生々しいことばについては、施術台の上で聞くことばでご紹介しています。
こりはどこに出るか ― 部位ごとのページへ
ひとことで言うと:こりは肩や首だけではありません。あご・背中・腰・手足にも現れます。部位ごとのくわしい解説は、それぞれのページにまとめています。
- 肩こり ― 僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋などのしこりと、「揉んでも戻る」理由
- 首こり・首筋の張り ― 後頭下筋群・頭半棘筋・頭板状筋・胸鎖乳突筋の4つの筋肉
- 顎こり(あごこり)・顔こり ― かむ筋肉(咬筋・側頭筋)と、表情筋のこわばり
- 背中のこり・張り ― 呼吸・姿勢と背中の筋肉
- 腰のこり(慢性腰痛) ― 腰の奥にある2つの筋肉と「しこり」
- 「手が凝る」「足が凝る」 ― 指の付け根・手の甲・足の甲の小さな筋肉
これらのこりは、ばらばらに起きているとは限りません。姿勢や筋膜のつながりを通して、首・肩・あご・背中が互いに影響し合っていると当院は考えています(緊張のつながり(緊張ネットワーク))。
施術台の上で聞くことば ―「この部分だけ取り替えてもらいたい」
ひとことで言うと:施術中に来院される方が口にすることばには、こりの正体が「奥にある一点(しこり)」であることが、そのまま表れています。
32年間、施術台の上でくり返し聞いてきたことばがあります。どれも専門用語ではありませんが、トラベル&サイモンズが体系化した筋・筋膜性疼痛の考え方と、驚くほど重なっています(以下は、当院でうかがう範囲での臨床上の印象です)。
「この部分だけ、取り替えてもらいたい」
32年間で、もっとも多く耳にしてきたことばです。とくに、何年も同じ場所がこり続けている方から聞きます。こりは「肩全体」「首全体」とぼんやり語られがちですが、長く付き合ってきた方ほど、「この部分」と一点を指さされます。体のほかの場所は困っていない、ここさえなければ ―― そんな実感がこもったことばです。
こりの多くが、特定の筋肉の、特定のしこりにまとまっている ―― という筋・筋膜性疼痛の見方を、ご本人の実感がそのまま言い当てているように当院は感じています。そして、その「この部分」は、こりを感じている場所そのものではなく、少し離れたところにあるしこりが響かせていることもあります(関連痛)。
「ここをほじくってくれ」
指で探っていくと、ある一点で「そこ!」と声が上がり、「もっと奥まで、ほじくってほしい」と言われることがあります。こりを感じているのは表面の広い範囲でも、ご本人が本当に押してほしいのは、奥にある、押すと響く一点です。これが、トラベル&サイモンズのいうトリガーポイント、当院でいう「しこり」です。
ただし当院は、強くほじくるほど良いとは考えていません。奥のしこりに届かせようと表面から強く押し込むと、浅いところに負担がかかり、揉み返しの原因にもなります(揉み返しについて)。鍼は、表面を押し込まずに奥へ届けられるのが利点です。必要な深さに、必要な量だけ ―― 当院は刺激量の加減を何より大切にしています(施術者の臨床ノート)。
「ここは一体、何なんですか?」
押されて初めて、自分の体の中にこんな硬い点があったのかと驚かれる方は少なくありません。しかもそこを押すと、肩や頭など、離れた場所にまで響くことがあります。この「何なんですか?」への答えが、筋肉の中にできる過敏な点 ―― トリガーポイントと、離れた場所に現れる痛み ―― 関連痛です。こりを感じる場所と、もとになっている場所がずれることがあるのは、このためです。
「鍼がこりに当たって、気持ちいい」
鍼がしこりに届いたとき、ズーンと奥に広がる感覚があります。鍼灸では、これを「響き」と呼びます。響きを「痛い」ではなく「気持ちいい」と表現される方が多く、とくにこりが重い方ほど、その傾向があるように感じています。
「揉んでも戻る」こりについて
ひとことで言うと:表面だけをほぐしても、奥のしこりと、こりを長引かせる要因が残っていると、こりは戻りやすいと当院は考えています。
トラベル&サイモンズは、しこりそのものだけでなく、姿勢・くり返しの動作・睡眠・ストレスといった、こりを長引かせる要因(永続化要因)を見直すことを重視しています。当院が施術とあわせて、日常のクセやセルフケアをお伝えするのはこのためです。くわしくはなぜ肩こりは「揉んでも戻る」のか、強めの手技のあとの重だるさ(揉み返し)については炎症のしくみ ―「こりを消す」のではなく「作り直させる」をご覧ください。
こりではないかもしれないサイン ― 先に医療機関へご相談ください
ひとことで言うと:次のような場合は、こりとして様子を見ずに、まず医療機関でご確認ください。
日常の場面ごとの目安は日常の動作・場面から探すに、当院で対応できる範囲は対応できる症状・できない症状にまとめています。ご予約前の確認には施術対応適否セルフチェック(約30秒)もご利用ください。快晴鍼灸院は施術所であり、診断は行いません。
「こり」についてよくあるご質問
Q.「こり」は病名ですか?
A. いいえ、病名ではありません。筋肉がこわばって重い・張る・硬いと感じる状態を表す、日本語の日常のことばです。快晴鍼灸院は、こりの多くを筋・筋膜性疼痛(MPS)という考え方で理解しています。当院は施術所であり、病名の判断は行いません。
Q.「こり」と「しこり」は違うのですか?
A. 当院では区別して使っています。こりは、こわばり・重さ・張りとして感じる体感のことばです。しこりは、筋肉の中に触れる、押すと響く過敏な点(トリガーポイント)を指して使っています。トリガーポイントは、離れた場所に痛み(関連痛)を感じさせることがあるとされています。
Q. 快晴鍼灸院は、こりをどのような考え方でみているのですか?
A. 筋・筋膜性疼痛(MPS)の考え方です。理論基盤は、ジャネット・G・トラベル医師とデビッド・G・サイモンズ医師による『トリガーポイントマニュアル(筋膜痛と機能障害)』で、当院は開業以来この本にもとづく評価と施術を続けてきました(施術理論の礎)。変化の現れ方には個人差があり、効果を保証するものではありません。
Q. しびれも「こり」ですか?
A. しびれは、こりとは分けて考えます。ジンジン・ビリビリするしびれ、力が入りにくい、感覚が鈍いといった症状は、神経が関わっていることがあるため、まず医療機関でご確認ください。
Q. こりは、強く押して(ほじくって)もらったほうが取れますか?
A. 強ければ良い、とは当院は考えていません。奥のしこりに届かせようと表面から強く押し込むと、浅いところに負担がかかり、揉み返しの原因にもなります。当院は、必要な深さに必要な量だけ刺激を届けることを大切にしており、鍼は表面を押し込まずに奥へ届けられるのが利点です。強さのご希望は、施術中にいつでもお伝えください。