首から起こる頭痛を、どう整理するか― 頸原性頭痛・後頭神経痛・むち打ち後頭痛・筋筋膜性頭痛の違い|足柄上郡 開成町の鍼灸・マッサージ|快晴鍼灸院(開成駅 西口 徒歩4分)
「首から頭痛が来ている気がする」――この実感に対して、医学の側には複数の異なる名前が用意されています。 名前が分かれているのは、痛みの出どころ(関節なのか、神経なのか、筋肉なのか、外傷なのか)と、 それを確かめられる人(医師なのか、施術者なのか)が違うからです。 このページは、ご自身の頭痛がどの枠に近いのかを言葉にし、最初にどこへ相談するかを整理するための一覧です。
当院は施術所であり、頭痛の種類を診断することはできません。ここで扱うのは「診断の手順」ではなく「用語の地図」です。 実際に診断名を確定できるのは医師のみで、以下の分類は医療機関での確認を置き換えるものではありません。 頭痛そのものの解説は緊張型頭痛のページ、首そのもののつらさは首こり・首の痛みのページ、 「もわーん」「ズキズキ」といった言葉から相談先を考える手順は頭痛の表現と相談先の目安で扱っています。
1.首から起こる頭痛――4つの呼び名の違い
同じ「首が原因の頭痛」に見えても、医学では出どころによって別の名前が付きます。 下の表は、それぞれが何を指しているのかを7つの軸で並べたものです。 ご自身に当てはまる列を探すためではなく、どの列とも言い切れないという状態がふつうであることを確かめるための表としてご覧ください。
| 確認する軸 | 頸原性頭痛 | 後頭神経痛(大後頭神経痛) | むち打ち後の頭痛 | 筋筋膜性の頭痛 |
|---|---|---|---|---|
| 痛みの出どころ | 上位頸椎(第1〜第3頸椎)の関節・椎間板・靭帯・深部の筋など | 大後頭神経・小後頭神経・第三後頭神経そのもの | 急激な前後の加速・減速で傷んだ首の組織(部位は一つに限らない) | 後頭下筋群・頭半棘筋・頭板状筋・胸鎖乳突筋などのトリガーポイント |
| 国際頭痛分類(ICHD-3)での位置 | 11.2.1 首の障害という原因が別にある二次性頭痛 | 13.4 頭部の神経の痛み(有痛性脳神経ニューロパチー等) | 5.3 / 5.4 外傷に起因する頭痛(急性/持続性) | 正式な分類名ではない 頭蓋周囲の圧痛を伴う緊張型頭痛と重なって扱われる |
| 代表的な痛み方 | 後ろから前(後頭部→こめかみ・目の奥)へ広がる、重く鈍い痛み | 突き刺す・電気が走るような発作。数秒〜数分で治まる | 受傷後に始まった頭痛。首の痛み・こわばりを伴うことが多い | じわっと広がり、範囲の境目がはっきりしない。締めつけられる感じ |
| 左右差 | 片側に偏りやすく、痛む側が発作ごとに入れ替わりにくい | 片側が多いが両側のこともある。神経の走行に沿う | 一定しない | 関与する筋によって変わる。両側のことも多い |
| 首の動き・圧迫との関係 | 首の動きや特定の姿勢で、普段どおりの頭痛が誘発される | 神経の出口(うなじの生え際あたり)を押すと強い圧痛が出る | 受傷後しばらくは、動かすこと自体がつらいことが多い | しこりを押すと、いつもの頭痛が再現される(関連痛) |
| 確認する人・方法 | 医師 画像・診察に加え、診断的な神経ブロックで痛みが消えるかを確認 | 医師 神経の走行に沿った所見と、診断的な神経ブロック | 医師 外傷歴の確認と、骨・靭帯・神経・頭蓋内の評価 | 医師・施術者 触診で圧痛点を探し、痛みが再現されるかを確認 |
| 当院の関わり方 | 診断はできません。確認済みの方に、筋・筋膜の層への施術をご相談いただけます | 神経痛そのものは対象外。周囲の筋の緊張には関われる場合があります | まず医療機関の確認が先。その後の残存するこわばりに関われる場合があります | 当院が主に扱う層です(鍼・深層筋への手技) |
※ ICHD-3=国際頭痛分類 第3版。国際頭痛学会が定め、日本頭痛学会が日本語版を公開している頭痛の分類です。 番号は分類上の位置を示すもので、重症度の順位ではありません。
2.それぞれを、もう少しだけ詳しく
4つの呼び名を、200字程度ずつで整理します。表の列だけでは伝わりにくい「なぜそう呼び分けるのか」を補うための説明です。
頸原性頭痛(けいげんせいずつう)― 首の関節から起こる頭痛
上位頸椎(第1〜第3頸椎)の関節や椎間板、靭帯、深部の筋などに原因があって起こる頭痛です。 国際頭痛分類では、原因がほかにある「二次性頭痛」として 11.2.1 に置かれます。 片側に偏りやすく痛む側が入れ替わりにくいこと、首の動きや持続した姿勢で普段どおりの頭痛が誘発されること、 後ろから前へ広がることが、片頭痛や緊張型頭痛と区別する手がかりとして挙げられます。 首の痛みを伴うことが多いものの、必ず伴うわけではありません。
診断は医師が行います。確認の方法の一つとして、原因と考えられる神経や関節に局所麻酔薬を注射し、 頭痛が消えるかどうかを見る「診断的神経ブロック」が用いられます。 この確認は施術所では行えません。
後頭神経痛(大後頭神経痛)― 神経そのものが痛む
大後頭神経・小後頭神経・第三後頭神経の支配領域に、突き刺すような、あるいは電気が走るような痛みが発作的に起こるものです。 一回の発作は数秒から数分で、痛む範囲の感覚が鈍くなる、ピリピリするといった変化を伴うことがあります。 うなじの生え際あたり――神経が筋膜を貫いて浅い層へ出てくる場所――を押すと、強い圧痛が出るのが特徴です。
頸原性頭痛とは別の分類ですが、症状は重なることがあり、診断的神経ブロックで痛みが消えるかを確認する点は共通します。 当院ではこの神経痛を、首こりの解説のなかで 天柱シンドロームと呼ばれる状態として扱っています。 なお後頭部は毛髪に隠れて発疹が見つけにくいため、帯状疱疹によるものが見逃されることがあります。
むち打ち後の頭痛 ― 決め手は症状ではなく外傷歴
交通事故やスポーツでの急な加速・減速(むち打ち)のあとに起こる頭痛です。 国際頭痛分類では、受傷後おおむね7日以内に始まったものを 5.3(急性)、3か月を超えて続くものを 5.4(持続性)としています。 ここで決定的なのは痛みの質ではなく、外傷を受けた事実があることです。
外傷後の頭痛には、骨や靭帯の損傷、神経の障害、頭蓋内の問題が隠れていることがあります。 そのため当院では、症状の強さにかかわらず、まず医療機関での確認をお願いしています。 確認が済んだあとに残る首まわりのこわばりについては、頸椎捻挫後遺症として 医師の同意書による健康保険(療養費)の対象となる場合があります。
筋筋膜性の頭痛 ― 筋肉の「しこり」が頭へ送る痛み
後頭下筋群・頭半棘筋・頭板状筋・胸鎖乳突筋などにできたトリガーポイント(硬く縮んだ小さなしこり)が、 離れた頭部へ痛みを送っている状態です。押すと普段の頭痛が再現される、じわっと広がる、範囲の境目がはっきりしない、 といった性質があります。どの筋がどこへ痛みを送るかは、 首こりと頭痛のつながり(早見表)にまとめています。
注意したいのは、「筋筋膜性頭痛」は国際頭痛分類の正式な項目ではないという点です。 分類上は、頭蓋周囲の圧痛を伴う緊張型頭痛として一次性頭痛の側に置かれるか、 頸原性頭痛を引き起こす要素の一つとして議論されます。当院が施術の対象として扱えるのは、主にこの層です。
3.なぜ4つは、こんなに重なって見えるのか
出どころが違うはずなのに症状が似てしまう理由は、信号の通り道が途中で合流するためです。
首の上の方(第1〜第3頸髄)から入ってくる感覚の信号と、顔や頭の前半分を担当する三叉神経の信号は、 脳幹から頸髄の上部にかけての同じ領域に集まります。この合流地点は「三叉神経頸髄複合体」と呼ばれます。
首から入った刺激が、こめかみや目の奥といった「首ではない場所」の痛みとして感じられるのは、この合流があるからです。 関節から来ても、神経から来ても、筋肉から来ても、途中から同じ道を通る――だから4つの呼び名は重なって見えます。 痛む場所と原因の場所がずれる現象そのものについては、関連痛のしくみで解説しています。
つまり「首を押すと頭痛が出る」という所見は、4つのどれでも起こりえます。 再現されるという事実は施術を組み立てる手がかりとして重要ですが、病態を決める根拠にはなりません。
4.先に医療機関で確認していただきたい場合
次のいずれかに当てはまる場合は、施術所へお越しいただく前に医療機関での確認をお願いしています。 施術で紛らわせてしまうと、確認が遅れる可能性があるためです。
- 外傷のあとに始まった頭痛 ― 交通事故・転倒・スポーツでの衝撃後。骨・靭帯・神経・頭蓋内の確認が先です。
- これまでで最も強い頭痛が、突然始まった ― 急を要する病態の可能性があります。
- 発熱を伴い、首の後ろが硬く前に曲がらない
- 手のしびれ・力の入りにくさ・歩きにくさを伴う ― 頸椎症性脊髄症などの可能性があります。
- 片側に固定した頭痛が、週単位で強くなっている
- 物が二重に見える、ろれつが回らない、けいれんなどを伴う
- 市販の鎮痛薬を、月に10日以上使っている ― 薬の使い過ぎによる頭痛の可能性があり、まず医師にご相談ください。
▶ ご予約の前に確認したい方は、施術対応適否セルフチェック(約30秒)をご利用ください。 当院で対応できる症状・難しい症状の全体像は対応できる症状・できない症状にまとめています。
5.当院ができること・できないこと
診断名を確定させることはできません。当院が首から起こる頭痛に対して行えるのは、次の3つです。
施術者の臨床ノート ― 後頭部の痛み方を、どう確かめているか
ここから先は、分類や解剖の話ではありません。実際の相談の場で、施術者・久保田が何をうかがい、何を確かめないようにしているかの記録です。
うかがっていること。当院では、とくに後頭部の痛み方を重視します。 髪や頭皮に触れたときのピリピリ感、振り向いた際の電撃痛、特定の動作や運動後の発症、 歯科での食いしばりの指摘、過去のコンタクトスポーツや事故歴などを確認します。
無理に誘発はしません。特定の動きを無理に行わせるのではなく、ご本人が再現動作を把握している場合に限って関連を確かめます。
その場だけで判断しません。また、施術直後だけで判断せず、帰宅後・当日夜・翌朝に頭痛が出なかったかを次回来院時に確認します。 首のこりが軽くなっても頭痛が増す場合は、刺激量や施術方針を見直し、必要に応じて医療機関での確認をお勧めします。
やさしい用語集 ― このページの言葉を、ひとことで
- 一次性頭痛
- ほかに原因となる病気が見当たらない頭痛。緊張型頭痛・片頭痛など。
- 二次性頭痛
- 別の原因(首の障害・外傷・病気など)があって起こる頭痛。頸原性頭痛はこちら。
- 上位頸椎
- 首の骨のうち、頭に近い第1〜第3頸椎。頭を支え、細かく動かす部分。
- 診断的神経ブロック
- 疑われる神経や関節に局所麻酔薬を注射し、痛みが消えるかで原因を確かめる方法。医師が行います。
- 三叉神経頸髄複合体
- 首からの信号と、顔・頭からの信号が合流する脳幹〜頸髄上部の領域。首の問題が頭の痛みに感じられる理由。
- 関連痛
- 原因のある場所と、痛みを感じる場所がずれる現象。首のしこりが目の奥に響くなど。
- トリガーポイント
- 筋肉の中にできる硬く縮んだ小さなしこり。押すと離れた場所へ痛みを送る。
- side-locked(サイドロック)
- 痛む側が発作ごとに入れ替わらず、いつも同じ側であること。頸原性頭痛の手がかりの一つ。
よくあるご質問 ― 首から起こる頭痛について
Q1. 医療機関で「頸原性頭痛」と言われました。鍼灸やマッサージは受けられますか?⌄
医師による確認が済んでいて、施術を控えるよう指示されていなければ、筋・筋膜の層に対する施術をご相談いただけます。 ただし頸原性頭痛の原因は関節・椎間板・靭帯・神経など多岐にわたり、そのすべてが施術所の範囲に入るわけではありません。 当院が扱えるのは、押すと普段の頭痛が再現される筋・筋膜の層に限られます。 診断名がついている場合は、受診先で伝えられた内容と、服用中のお薬を最初にお知らせください。
Q2. 緊張型頭痛と頸原性頭痛は、どう違うのですか?⌄
国際頭痛分類での位置づけが違います。緊張型頭痛は、ほかに原因が見当たらない一次性頭痛です。 頸原性頭痛は、首(主に上位頸椎)の障害という原因が別にある二次性頭痛です。 実際の症状では、頸原性頭痛は片側に偏りやすく痛む側が入れ替わりにくいこと、 首の動きや特定の姿勢で普段どおりの頭痛が誘発されること、後ろから前へ広がることが手がかりとして挙げられます。 ただし両者は重なることがあり、症状の印象だけで分けることはできません。 緊張型頭痛そのものの解説は緊張型頭痛のページをご覧ください。
Q3. 首を押すと頭痛が出ます。頸原性頭痛ということですか?⌄
それだけでは決まりません。首を押して頭痛が誘発される所見は、頸原性頭痛でも、 後頭下筋群などのトリガーポイントによる筋・筋膜性の関連痛でも、後頭神経痛でも起こりえます。 上位頸椎の関節と、その上を通る筋肉と、後頭部へ向かう神経は、いずれも近い場所にあるためです。 押して再現されるという事実は施術の手がかりとして重要ですが、病態を決める根拠にはなりません。
Q4. 事故のあとから続く頭痛です。まず何をすればよいですか?⌄
外傷のあとに始まった頭痛は、症状の強さにかかわらず、まず医療機関での確認をお願いしています。 骨・靭帯・神経の損傷や頭蓋内の問題が隠れている可能性があり、それを確かめられるのは医師だけだからです。 確認が済んだあとの筋・筋膜のこわばりについては、頸椎捻挫後遺症として医師の同意書があれば 健康保険(療養費)の対象となる場合があります。 費用の扱いはご加入の保険により異なるため、事前にお問い合わせください。
Q5. スマホやデスクワークの姿勢は、首から起こる頭痛と関係がありますか?⌄
頭が前へ出た姿勢が続くと、後頭下筋群をはじめとする首の後ろの筋肉は、 頭の重さを支えるために縮んだまま働き続けることになります。 この持続した負担がトリガーポイントの形成につながりうる、というのが筋・筋膜からの見方です。 ただし姿勢が頸原性頭痛の原因であると証明されているわけではありません。 姿勢の背景についてはストレートネック・頭部前方姿勢のページで扱っています。
構成時に確認した主な資料
- 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会(訳)『国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)』医学書院、2018年(11.2.1 頸原性頭痛/13.4 後頭神経痛/5.3・5.4 むち打ち損傷による頭痛)
- International Headache Society. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition.(ichd-3.org にて全文公開)
- Sjaastad O, Fredriksen TA, Pfaffenrath V. Cervicogenic headache: diagnostic criteria. Headache. 1998;38(6):442-445.(Cervicogenic Headache International Study Group による診断基準)
- Bogduk N, Govind J. Cervicogenic headache: an assessment of the evidence on clinical diagnosis, invasive tests, and treatment. Lancet Neurol. 2009;8(10):959-968.
- Travell JG, Simons DG. Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual, Vol.1.(後頭下筋群・頭半棘筋・頭板状筋・胸鎖乳突筋の関連痛パターン)
※ 本ページは、これらの資料をもとに用語の位置関係を整理したものです。個々の症状がどれに当たるかの判断は医師によります。 記述の誤りが判明した場合はお知らせで訂正します。