鍼灸・マッサージと健康保険 ― 受領委任・同意書・併給制限をやさしく解説
答えは「条件を満たせば使えます」。ただしその条件は、病院のしくみとはかなり違っていて、医師の同意書が必要だったり、はり・きゅうでは病院の治療と並行できないルール(併給制限)があったりと、初めての方にはわかりにくいのが実情です。
このページでは、受領委任取扱施術所として厚生労働省(関東信越厚生局)の承認を受けている快晴鍼灸院(施術者:久保田崇士/臨床32年・国家資格保有)が、制度のしくみをできるだけやさしい言葉で解説します。
1.鍼灸・マッサージの保険は「療養費」という別のしくみ
病院や診療所で保険証(マイナ保険証)を出して受ける診療は、健康保険の言葉で「療養の給付」と呼ばれます。窓口で1〜3割を払えば、残りは保険から医療機関へ直接支払われる――おなじみのしくみです。
一方、鍼灸・マッサージの保険施術はこれとは別枠の「療養費(りょうようひ)」という給付にあたります。療養費は「いったん患者さんが費用を全額立て替え、後から加入先の保険者(協会けんぽ・健保組合・市町村国保など)に請求して払い戻しを受ける」のが原則です。これを償還払い(しょうかんばらい)と呼びます。
2.受領委任とは ― 立て替え不要で、窓口1〜3割負担に
「全額立て替えて、自分で請求書類を作って保険者に郵送する」――償還払いは、患者さんにとってかなりの負担です。とくに施術が毎週続く場合、立て替え額も書類の手間も積み重なります。
そこで設けられたのが「受領委任(じゅりょういにん)」という方式です。患者さんが払い戻し金の受け取りを施術者に委任することで、
- 患者さんは病院の窓口と同じように、一部負担金(1〜3割)だけを支払う
- 残りの費用は、施術者が患者さんに代わって保険者に請求する(療養費支給申請の代行)
という、病院に近い形で保険施術を受けられるようになります。
| 償還払い(原則) | 受領委任払い | |
|---|---|---|
| 窓口での支払い | 施術費の全額を立て替え | 一部負担金(1〜3割)のみ |
| 保険者への請求 | 患者さん自身が申請書類を作成・提出 | 施術者が代行 |
| 取り扱える施術所 | どの施術所でも | 厚生局の承認を受けた施術所のみ |
はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧の受領委任は、から全国統一のしくみとして始まりました。取り扱うには、施術所・施術者が地方厚生局に申し出て承認を受ける必要があり、どの鍼灸院・マッサージ院でも扱えるわけではありません。当院は制度開始当初のから承認を受けています(当院の対応状況)。
3.医師の同意書 ― 保険施術の「入口」
鍼灸・マッサージの施術に健康保険を使うには、医師の同意書が必ず必要です。これは「医師が診察したうえで、この症状に施術が必要だと認めました」という証明書で、保険施術の入口にあたります。同意書なしに保険施術を始めることはできません。
同意書の基本ルール
- 交付するのは保険医療機関の医師です。かかりつけ医に診察を受け、「はり・きゅう用」「マッサージ用」それぞれ専用の様式に記入してもらいます(様式は当院でもお渡しできます)。
- 有効期間はおおむね6か月です。6か月を超えて施術を続けるには、再び医師の診察を受けて再同意(文書)をもらう必要があります。
- 例外として、関節の変形を徒手で矯正する「変形徒手矯正術」のみ、同意の有効期間は1か月です。
- 継続にあたっては、施術者が施術報告書(施術の内容・頻度、患者さんの状態・経過)を医師へ交付し、医師と施術者が連携して経過を見るしくみが定められています。
4.対象となる症状 ― はり・きゅうとマッサージで異なる
ひとくちに「鍼灸・マッサージの保険」といっても、はり・きゅうとあん摩マッサージ指圧では、対象となる症状の考え方が異なります。
はり・きゅう ― 「病名」で決まる(6疾患)
はり・きゅうの療養費は、慢性的な痛みを主な症状とする病気が対象で、代表として次の6疾患が定められています。
- 神経痛(坐骨神経痛など)
- リウマチ
- 頸腕症候群(けいわんしょうこうぐん)
- 五十肩(肩関節周囲炎)
- 腰痛症
- 頸椎捻挫後遺症(むちうちの後遺症)
このほか、これらに類似する慢性的な疼痛を主症とする疾患について医師が同意した場合も対象となり得ます。
あん摩マッサージ指圧 ― 「体の状態」で決まる
マッサージの療養費に、決まった病名のリストはありません。筋麻痺(筋肉のまひ)や関節拘縮(関節が固まって動かしにくい状態)など、医療上マッサージを必要とする体の状態に対して、医師が同意した場合に対象となります。脳卒中の後遺症で手足が動かしにくい方、寝たきりで関節が固まりやすい方などが典型例です。
5.併給制限 ― はり・きゅう最大の注意点
はり・きゅうの保険施術には、もうひとつ大切なルールがあります。同じ病気・症状について、医療機関の治療と保険のはり・きゅう施術を同時期に重ねて受けることはできない――これが併給制限(へいきゅうせいげん)です。
ここでいう「医療機関の治療」には、投薬(痛み止め・湿布の処方を含む)・注射・リハビリテーションなどが含まれます。同意書交付のための診察や検査は例外として認められていますが、「整形外科で腰痛の治療を受けながら、同じ腰痛で保険のはり施術も受ける」ことはできません。
マッサージには併給制限がありません
重要な違いとして、あん摩マッサージ指圧の療養費には、この併給制限がありません。たとえば脳卒中後遺症の方が、主治医のもとでお薬やリハビリの治療を続けながら、同意書に基づく保険のマッサージ施術を並行して受けることができます。当院が行っている視床痛・麻痺の方への訪問マッサージは、まさにこのしくみを利用したものです。
| はり・きゅう | あん摩マッサージ指圧 | |
|---|---|---|
| 対象 | 神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症など(病名で判断) | 筋麻痺・関節拘縮など(体の状態で判断) |
| 医師の同意書 | 必要(おおむね6か月ごと) | 必要(おおむね6か月ごと/変形徒手矯正術は1か月) |
| 医療機関との併用 | 同一疾病では不可(併給制限) | 可能 |
五十肩の例 ― 「対象疾患なのに、実質使いにくい」理由
この併給制限を知ると、五十肩のページでご説明している「保険のはり施術は実質的にほとんど機能していない」という事情が見えてきます。五十肩は対象6疾患に入っていますが、整形外科で十分治療できる症状について医師が同意書を書く場面は現実には少なく、仮に保険はり施術を選ぶと、整形外科の保険リハビリは同時に受けられなくなります。理学療法の環境が整った現在、まず整形外科の保険リハビリを使うほうが合理的――というのが当院の見解です。
6.当院の対応状況 ― 訪問マッサージが中心です
当院は、「はり」「きゅう」および「あん摩マッサージ指圧」の受領委任取扱施術所として、から厚生労働省 関東信越厚生局の承認を受けています。受領委任払いに対応しているため、保険施術では窓口で一部負担金(1〜3割)をお支払いいただくだけで済みます。

▲ 関東信越厚生局「はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の受領委任取扱い施術所一覧」(外部サイト)で確認できます。
当院の保険施術の中心は「訪問マッサージ」
当院の保険施術は、麻痺疾患などで自力通院が困難な方を対象とした、医師の同意書に基づく訪問マッサージ(当院から約4km圏内・30分)が中心です。脳卒中後遺症の麻痺・関節拘縮、視床痛のある方の生活の質(QOL)の維持をお手伝いしています。
一方、外来の施術は自費が中心です。自費施術は同意書も併給制限も関係がないため、病院の治療と並行して、症状を病名で区切らずに全身を一続きに診られる――という自費ならではの利点を活かしています(当院の施術)。
7.保険施術ご利用の流れ(訪問マッサージの場合)
症状・お住まいの場所・通院状況を伺い、保険施術の対象になりそうか、率直にお伝えします。対象にならない場合も、自費施術など他の選択肢をご案内します。(TEL 0465-83-0380)
かかりつけ医(脳卒中後遺症の方は神経内科・脳神経外科の主治医など)に診察を受け、マッサージ用の同意書を交付してもらいます。同意書の様式や依頼のしかたは当院がご案内します。
同意書の内容に沿って訪問マッサージを開始します。受領委任払いのため、お支払いは一部負担金のみ。療養費の請求手続きは当院が代行します。
施術を続ける場合は、6か月ごとに医師の診察と再同意が必要です。当院から医師へ施術報告書をお渡しし、経過を共有しながら進めます。
やさしい用語集 ― このページに出てきた言葉
- 療養費(りょうようひ)
- 病院の窓口負担で受ける通常の保険診療(療養の給付)とは別枠の、「いったん立て替えて後から払い戻しを受ける」タイプの健康保険の給付。鍼灸・マッサージの保険施術はこちら。
- 償還払い(しょうかんばらい)
- 療養費の原則的な受け取り方。施術所でいったん全額を支払い、患者さん自身が保険者に申請して払い戻しを受ける方式。
- 受領委任(じゅりょういにん)
- 払い戻し金の受け取りを施術者に委任する方式。患者さんは一部負担金(1〜3割)だけを支払い、請求手続きは施術者が代行します。厚生局の承認を受けた施術所のみ取り扱えます。
- 医師の同意書
- 保険施術の前提となる、医師の診察に基づく証明書。有効期間はおおむね6か月で、続ける場合は再同意が必要(変形徒手矯正術のみ1か月)。
- 併給制限(へいきゅうせいげん)
- はり・きゅうの保険施術を、同じ病気・症状についての医療機関の治療と同時期に重ねて受けられないルール。マッサージにはこの制限がありません。
- 一部負担金
- 保険施術の窓口で支払う自己負担分。年齢や所得に応じて費用の1〜3割。
- 保険者(ほけんしゃ)
- 健康保険を運営している組織(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保・後期高齢者医療広域連合など)。療養費を支給するかどうかの最終判断を行います。
よくあるご質問
鍼灸・マッサージの健康保険について、よくいただくご質問をまとめました。ご不明な点はお電話(0465-83-0380)でもお気軽にお尋ねください。
Q. 鍼灸院・マッサージで健康保険は使えますか?
A. 条件を満たせば使えます。大きな条件は3つで、(1) 対象となる症状であること(はり・きゅうは神経痛・リウマチ・五十肩・頸腕症候群・腰痛症・頸椎捻挫後遺症など、マッサージは筋麻痺・関節拘縮など)、(2) 医師の同意書があること、(3) はり・きゅうの場合は同じ症状について医療機関の治療と並行しないこと(併給制限)です。最終的に支給するかどうかは加入先の保険者が判断します。
Q. 受領委任とは何ですか?
A. 鍼灸・マッサージの保険施術は本来「いったん全額を支払い、後から患者自身が保険者に請求して払い戻しを受ける」償還払いが原則です。受領委任は、この払い戻しの受け取りを施術者に委任する方式で、患者さんは病院の窓口と同じように1〜3割の一部負担金を支払うだけで済み、面倒な請求手続きは施術者が代行します。2019年1月から全国統一の制度となり、厚生局の承認を受けた施術所だけが取り扱えます。当院は2019年1月1日から承認を受けています。
Q. 医師の同意書はどこでもらえますか? 有効期間はありますか?
A. かかりつけ医など保険医療機関の医師に診察を受け、「はり・きゅう用」または「マッサージ用」の同意書様式に記入してもらいます(様式は当院でもお渡しできます)。同意書の有効期間はおおむね6か月で、6か月を超えて施術を続けるには医師の再同意(文書)が必要です。なお関節の変形を矯正する「変形徒手矯正術」のみ有効期間は1か月です。継続にあたっては、施術者が施術報告書で医師に経過を伝える連携のしくみも定められています。
Q. 病院に通いながら、保険ではり・きゅうを受けられますか?
A. 同じ病気・症状についてはできません(併給制限)。はり・きゅうの療養費は、同一疾病について医療機関の治療(投薬・注射・リハビリなど)と同時期に重ねて受けることが認められていません。同意書交付のための診察や検査は例外です。別の病気での通院(例: 腰痛症で保険はり施術を受けながら、高血圧で内科に通う)は問題ありません。
Q. 保険のマッサージも、病院の治療と併用できないのですか?
A. マッサージは併用できます。あん摩マッサージ指圧の療養費には、はり・きゅうのような併給制限がありません。たとえば脳卒中後遺症の方が、主治医のもとでお薬やリハビリの治療を続けながら、同意書に基づく保険のマッサージ施術を並行して受けることができます。当院の視床痛・麻痺の方への訪問マッサージはこの仕組みを利用しています。
Q. 快晴鍼灸院で保険施術を受けたい場合は、どうすればよいですか?
A. まずお電話(0465-83-0380)でご相談ください。当院の保険施術は、麻痺疾患などで自力通院が困難な方を対象とした訪問マッサージ(当院から約4km圏内・30分)が中心です。症状やお住まいの場所を伺ったうえで、対象になりそうかどうか、同意書の依頼のしかたから順を追ってご案内します。外来の施術は自費が中心ですが、ご事情に応じてご相談に応じます。
お問い合わせ・院情報
快晴鍼灸院(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう/受領委任取扱施術所)
〒258-0021 神奈川県足柄上郡開成町吉田島4345-5 杉山ビル1階C号
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